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ねこのごろごろ

おさかなねこです。

「自分はHIVに感染してない」と、心の底から言える?

HIV検査?うん、したことあるよ」
 
 
私がこんな発言をしたとき、あなたは私にどんなイメージを抱くのか。
 
(検査行かなきゃいけないほどアブないことしたの?)(へえ、遊んでるんだ?)(そういうこと人に喋って、恥ずかしくないの?)
 
ええわかってる。わかってますとも。殆どの反応はこうだった。医療従事者にもそんな反応されてしまうのだから、今の日本の現状としてはたぶんもうどうしようもないことなんだろう。私のような年齢の女性が性に関連したことを話すのは少なくとも日本では「恥じらいがなく」「遊んでいる」ことになりやすい。好奇の目でばかり見られやすい。それにたぶん「生々しい」。話の本筋から少し外れるけど、私個人の意見としては正直誰がどれだけ遊んでようが自己責任で・二者間の合意の上で・二者間で完結している関係なら第三者がとやかく言うことでも喚くことでも批難されることでもない気がするのだけども、まあそうは思えない人も茶化して楽しみたい人もいるのが当然で(だからあんなにみんなゴシップネタがお好きなんでしょ?)、つまり「遊んでる」というイメージを持たれるような発言をしないほうが変に噂もされないし、楽でしょう。下手に喋らないほうが誤解も受けずに生きていける。
 
それでも私は話す。
ちょっぴり勇気を振り絞って。
 
恥じらいは、向かい合うべきことから逃げることじゃないから。
この生々しさを持ってでしか、あなたに響かないことがあるかもしれないから。
誤解を受けてでも、あなたに伝えたいことがあるから。
だからあなたにも少しだけ、少しでいいから、茶化さずに私の話を聞いてもらえたら嬉しいです。
 
HIVエイズについての正しい知識について〜とかは今回割愛してしまうので、ぶっちゃけよく分かってないよ!という人はこちらのサイト(http://www.hivkensa.com/whatis/)(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/400-aids-intro.html)などを一読してからぜひこちらに戻ってきてください。お願いします。
 
 

 

 
あなたは、「自分はHIVに感染してない」と、心の底から言えますか?
 
性的接触をしたことないという人や正真正銘の初めて同士でしか性的接触をしてないという人は、母子感染も輸血感染もほぼ無くなっている日本でなら、感染してないと心の底から言えるでしょう。
じゃあ、そうでない人は?
 
「彼氏としかしてないもん」
「特定の人としかしてないし」
「今まで付き合った人、みんな真面目な人だったよ」
「全員とゴムつけてやってるし大丈夫っしょ」
「私の彼氏はそんな感染するようなやましいことしてない」
「俺の彼女、元彼1人だし」
「そんな疑うような人じゃない。そういう話やめてくれる?」
 
パートナーというのは、樹形図になる(下手な絵になっちゃった)。

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今特定の人としか性行為をしていなくても、どちらかの過去に別の誰かがいれば、それだけで感染のおそれがある。そりゃあ風俗とかにバンバン行ってたりワンチャン繰り返してる人とかとそうでない人を比べたら圧倒的に前者の方が危ないですが、真面目不真面目関係なしに感染の可能性はある。
「相手の過去を疑う」「疑わない」とかそういう話じゃないんです。だって検査しなくちゃ感染したかわからないんだもの、HIV感染って。
 
HIVエイズによくある勘違いとしては、男性同士の性行為でしか感染しない、挿入のときコンドームを使用していれば絶対大丈夫というのがあると思います。違います。異性間の性行為でも普通に感染しますし、ゴムをつけてないオーラルセックスをしてれば感染の可能性はあります。
つまり、性行為をする可能性がある人なら誰でもかかりうる性感染症のひとつなのです。それもHIV感染したことには(検査をしなければ)殆どの場合気付かず、パートナーと性行為をしパートナーにも感染を広げ、そして数年〜数十年後に症状がでてきた頃にはもう身体のなかはボロボロで、なおかつまだ根治療法が確立されていない性感染症。早期発見がこれほど重要な性感染症はない。それがHIVエイズです。
 
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「でもどうせそんなHIV感染なんて滅多にないし、自分には関係ない」と思った人、「でも結局遊んでたりする人の話でしょ?」と笑っている人へ。
 
とある友人の話を少しさせてください。
(友人から許可は貰っています。だいぶ昔の話だし、誰にも話したことはないし、私の知人でこの話を知ってる人はいないはずだけど、それなりに時期や諸々にフェイクをいれているので矛盾が生じていたらごめんなさい)
 
友人には、結構長い期間付き合って1年ほど前に別れた元恋人がいました。そして今新たな恋人がいます。
 
ある夜、その友人から電話がかかってきて、掠れた声でたった一言「どうすればいいのか」と発したあと、友人はしばらく黙り込んでしまいました。私も黙っていました。
 
「元恋人が、HIV陽性だったらしい」
 
随分時間が経ったあと、友人は突然吐き出すように話し始めました。
 
「自分と付き合ってる間や別れたあとに誰かと肉体関係を持ったということはないらしい。つまり自分と付き合う前か、自分と付き合ってる間に感染していたらしい。でもHIVに感染しそうな危ないことをしたことも全く無いらしく、一体誰から感染したのか分からない」
「恋人にも誰にも怖くて話せずにいたが、前にさかなねこがHIV検査のことを話していたのを思いだして、耐えきれずに電話した」
「もしかしたら自分も感染しているかもしれない。自分が移したのかもしれない。そしたら今の恋人にも移しているのかもしれない。でも万一陽性だったらと思うと、恐ろしくて検査にいけない」
 
「自分は一体、どうすればいい?」
 
 
結論からいうと、友人はHIV陰性でした。
保健所で即日検査を受けた帰り道、私に電話してきた友人の声は、安堵で震えていました。
 
でもあの数週間、友人はとてつもない不安と絶望を彷徨ったことでしょう。同時に友人の元恋人は、自分のことはもちろんですし、一体どんな精神状態で元恋人達に連絡を取ったのだろうか。
 
友人も友人の元恋人も、少なくとも当人達は真面目な男女関係を築いてきたはず。それでも「HIV陽性」という文字を自分たちの前に突きつけられることがあるのです。
 
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私はなぜだか「性的接触なんてものは自分には一生無縁なんだろうなあ」と思っていたときから、HIVエイズに恐怖を抱いていました。そしてもちろん無縁じゃなくなった今も、怖いには怖いです。ただ怖がるだけではなくなったけどもね(この辺については後日書かせていただけたら)。
 
根治療法が確立されていない疾患なのに感染したことに気付かない、そして感染させたことにすら気付けない。自分だけじゃない、大切なパートナーの人生を、更に言えば自分のなかに宿るかもしれない新たな命すら、知らずに壊してしまうかもしれない。
 
「気付きにくい」癖に「知らなかった」では済まされない重みが、
ずっとずっと恐ろしかったのです。
 
なので自分が異性との性的接触と無縁ではなくなって今現在の私は、節目ふしめでHIV検査に行くことにしています。「まあ陰性だろう」と思いながらも毎度どきどきするものなのよね。ついでにHIV陰性です。
そう。「自分は感染してない」と思いながらもいつだって怖い。もっと早くから行けたはずなのに、ぶっちゃけたところ私も実際にいけたのはだいぶ後でした。パートナー達が検査してくれてたっていうのに甘えてたところもありました。やれやれだな私。
あなただって「自分は感染してない」と主張するなら、保健所や病院で即日検査を受けにいけばいい。匿名でも無料でもできる場所はあるのです。数時間で安心できるのです。それなのにあなたが検査を受けないのは、なぜ?「面倒くさい」?
それとも「こわい」ですか?
私は、怖かった。
 
少なくともいまの私は、
自分のために。大切なパートナーのために。
将来身に宿るかもしれない命のために。
 検査にいきます。
 
「気付きにくい」癖に「知らなかった」では済まされない重みを、
私もあなたも背負うことがありませんように。
 
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あなたは「自分はHIVに感染してない」と心の底から言えますか?
ここまで読んでも「検査にいったことがある」という人間を笑えますか?
 
本当はこんな自分のプライベートすぎる話なんてしないほうがいいのかもしれない。でもみんな、講義で受けようが結局は他人事としか捉えられない。生々しさを持って書かなくちゃ、きっと誰の心も通り過ぎてしまうんだろう。
快楽としてのセックスやそういう関係に関してはずっとずっと昔よりポジティブに表面化されているのに、どうしてもっと根源的な性の問題についてはこんなにも広まらないのだろう。無視されてしまうのだろう。
 
 
この生々しさを持ってして、誰かひとりにでも響いてくれたらと願っています。
 
 
◯あくまで予防と検査の重要性を強調して書きたかっただけであり、HIV陽性が出たからといって全てが終わりな訳では全くありません。もしもHIV陽性だったとしても早期発見できれば他の人に感染させずにいられますし、早期治療ができればエイズ発症を抑えて一般の人と変わらない生活ができます。HIVエイズへの正しい知識と、予防をちゃんとした上で必要以上に恐れないことの大切さを、いつか書けたらいいな。
 
◯海外ではパートナーと一緒にHIV検査に行くことは割とよくあることのようです。これができるのは、どちらかにHIV陽性がでてしまったとしても前向きに関係を築いていけるほどHIVエイズへの正しい知識が普及しているからなのだろうな。うらやまし。